2005年のスカイスポーツシンポジウムでの発表原稿を元に、ブラッシュアップしたものです。
「テストフライトの計画」編
第3部「墜落の危険を回避するには」
墜落の危険を回避し、琵琶湖での安全性を確保するためには、テストフライトを行い飛行特性を把握し、機体の信頼性の向上及びパイロットの機体の理解を深めさせることが必須です。
しかし、テストフライト自体に危険な部分があります。テストフライトは、プロジェクト全体の計画にきちんと位置づけるとともに、それ自体Step By Stepに段階を踏んで行うことが安全確保に重要です。
3.1 二つのテストフライトのスケジュール
安全にフライトを行うには、ムリのない計画を立てることが重要です。スケジュールを考える上で、大きく二つのスケジュールがあります。
●シーズンスケジュール
機体の操縦性・安全性を確保するためのテストフライトと、機体製作を両立する日程を確保することが必要。
当チームのテストフライトには少なくとも3ヶ月程度の期間を充てる必要があると考えています。これは、当チームが土日しか作業を行えない事情および天候に より試験を実施できないことを踏まえ、テストフライトの準備=実施=調整のサイクルを考えた結果です。この期間中に5~6回のフライトを行うことを想定し ています。
●当日のスケジュール
10人近く(以上)の人間が、前日の準備から丸一日以上、連続して作業するので、お互いの状況をよく共有することが必要。適宜休憩をとり、時には試験自体を中断・中止しなければならない。
また、当日のスケジュールも、綿密に考えておく必要があります。 10人近く(以上)の人間が、前日の準備から丸一日以上、連続して作業するので、お互いの状況をよく共有することが必要です。 ここの準備の度合いで、当日の成果が変わってきます。
シーズンスケジュールでは、自分たちの飛行機をどのように仕上げるのかについて戦略を練る必要があります。クールスラストでは、テストフライトを進めるに当たって4つの段階に分けて考えています。
| 第1段階 | 地上滑走 「機体の取り扱いになれること」を目的とした試験を行います。 |
| 機体が滑走できる能力があるか、グランドクルーが機体をきちんと支えられるか、メンバー間の連絡が確実に行うことができるか等、確 認します。この段階は製作とのかねあいで準備不足になりがちですが、パイロットも地上クルーも慣れていないことに留意して、十分な準備が必要です。 | |
| 第2段階 | ジャンプ飛行 「機体の各部が正しく機能し、重心やトリムなど最低限の調整がとれていることの確認」を目的としています。 |
| 飛行荷重に耐えられることの確認でもあります。 さらに、グランドクルーが、飛行する機体を確実にサポートできるための練習でもあります。滑走に比べだいぶ高速になります。 | |
| 第3段階 | 着陸練習(100~200m程度の飛行) 「パイロットが機体を操作し、目標の位置に着陸できるための練習」の段階です。パイロットに機体を操作させることが重要です。 |
| この段階で、主翼の上半角や取り付け角、機体の縦・横の安定の調整ができます。 距離が伸びるので、地上クルーの動きが変わります。特にクルーの交代を意識します。 | |
| 第4段階 | 飛行練習(滑走路長の飛行) |
| 第4段階で初めて、本来目的であるパイロットの練習や、機体の性能確認のための飛行試験の実施を行います。巡航のための機体の微調整、エレベーター・トリムやプロペラ・ピッチの調整などは、この段階で行っています。 |
このように、CTでは本来の機体の調整を行う第4段階以前に、安全確保のための3段階のStepを設けています。また、段階ごと、機体の性能を十分考慮し、どのような飛行を行うのか予め計画し、メンバーに周知しておくことが重要です。
3.3 テストフライトで行っている運用面の対策
設計、製造で万全を尽くしても、テストフライトで事故があっては元も子もありません。しかしながら人間がチームワークをもって取り組む必要があるため、難 しい部分があります。 多くの場合、テストフライトで問題が生じるときは疲労やタイムプレッシャーの存在があります。クールスラストにおいても、ケガや機体の損傷はテストフライ ト後半で発生しています。前日から準備をしている場合がほとんどのテストフライトでは、終了間際には疲労が蓄積していることが多いので、十分注意してくだ さい。 随時休憩をとり、水や食べ物(飴などもよい)を摂らせること、声を掛け合うこと、担当の交替を決めておくこと等が有効です。
運用の効率を向上するには、チェックリスト等の活用が有効です。
- 持ち物チェックリスト
- 組み立てチェックリスト
- セッティングチェックリスト
- Before Takeoffチェックリスト 等々
クールスラストでは、さらに時間管理担当者をおいて、作業進捗をモニターしています。状況に応じ、当日のスケジュールを修正するための客観的な意見を得るためです。
第4部「最後に」
テストフライトは鳥コンでの安全確保のために重要であることを述べてきました。自分たちの作った飛行機をみることができるテストフライトは楽しいもので す。しかしながら、飛行するということは、危険なことであることを忘れてはいけません。いつ想定外のことが起こるかは分かりません。 そして、判断に迷ったとき安全を優先することは、メンバーも機体も同時に守ることです。まずは一息ついてから周りをみて、次のことを考える余裕を持ちま しょう。
(次回から具体的失敗例についての「テストフライトの問題事例」編に入ります。 第1部「設計不良編」を2007/5/14に掲載予定です。)
ykuni
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