人力飛行機制作集団Coolthrust 「人力飛行機の試験飛行における安全対策について」 ~実例紹介を通じて(その1)

2005年のスカイスポーツシンポジウムでの発表原稿を元に、ブラッシュアップしたものです。

人力飛行機制作集団Coolthrust 「人力飛行機の試験飛行における安全対策について」 ~実例紹介を通じて(その1)

「テストフライトの計画」編

第1部「はじめに」

 今日、学生を中心とする多くの団体で人力飛行機の制作が行われています。その目的のほとんどは、鳥人間コンテストへの参加だと思います。昨今の大会参加 機をみると、機体性能が大変向上しており、当初見られたような明らかに強度不足の機体はほとんど見られず、ポテンシャル的にはキロ単位の飛行ができるチー ムは何チームもあると思います。

 一方で、調整不十分なまま飛行を行っていると思われる機体もあります。今後、調整を十分に行っ た機体が飛距離を伸ばしていくと思いますが、調整を進めるのにはテストフライトを行うことが必要です。機体を飛行させるということは、はやり危険を伴うこ とであり、十分な安全への配慮が必要であることは言うまでもありません。本稿では、テストフライトを安全に進める参考としていただくため、当チームの事例 を紹介します。

 なお、実際の航空業界では、国の事故調査委員会による事故調査報告書や事故に至らなかった事例(インシデント)の調査報告書が作成・公開されています。 また、実際に航空機を飛ばす人々、たとえばパイロットの間でも、危険な事例についての情報交換が行われています。そのような情報交換が、今後活発になるこ とを期待しております。

第2部「人力飛行機にとっての危険とは?」

 人力飛行機には、必ず危険が伴います。これは、スカイスポーツである以上、避けられないことです。では、その危険とは何でしょうか。特に避けなければならないものがあります。それは地上への墜落です。

 設計、製造、セッティングの不良または理解不足、あるいは気象の要素が危険につながるものと考えます。

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 鳥人間コンテストでは、最も近い陸地はせいぜい2~300メートルの距離にあり、参加チーム全体における機体の性能向 上とともに年々墜落が起こる危険は高まっていると思います。当チームでは第25回鳥人間コンテスト(2001年)において、空中分解の結果、地上ギリギリ に墜落する事例を経験していますが、旋回時の強度不足はもとより、なぜ、地上に近づいてしまったのか検証しています。

 離陸時左からの風でしたが、その風により機体は陸地方向へ流されています。ビデオで検証したところ、パイロットはラダーを切り 機首を左に向ける操作を行っていますが、胴体の剛性の不足のため十分な応答を得ていません。このような状況下では必要な操縦が行えない特性であったにもか かわらず、テストフライト回数が少なく、最低限、縦の操縦・安定性について、また、横は安定であることだけについてしか検証を行っていませんでした。

 なお、類似の事例としては、記憶の範囲では地上への墜落2事例、操縦不能のままの飛行継続4事例(うち1件は飛行禁止区域を飛行)があります。

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 各事例で緊急回避操作が適切にできていたのか大変疑問に思っています。本来、湖岸の回避不能、操縦不能等、危険であることが判明したならば、速や かに着水させるべきです。人力飛行機はその特性上、非常に大きな滑空比を持っており容易に高度を落とすことができません。自機の滑空性能は必ず計算して把 握してください。テストフライトでも実際の鳥人間コンテストでも必ず役に立ちます。そのときのポイントはプロペラ推力を必ず加味することです。

 これらの機体はいずれも陸地まで到達できる性能を有しており、このような機体では事前のテストフライト等で十分な確認を行うことが、事故の防止に繋がると考えます。

(次回、「テストフライトの計画」編 第3部「墜落の危険を回避するには」、第4部「最後に」を、2007/5/7に掲載予定です。)

ykuni

このブログ記事について

このページは、が2007年4月30日 00:00に書いたブログ記事です。

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